夜行バスに乗ってフェズからハシラビードに到着しました。
時刻は午前5時40分です。
バスから降りた私は辺りが真っ暗で何もないことに驚きました。
民家が2~3件あるだけで、バス停さえ見当たりません。
バスの運転手が待っていてくれたので、行き先をメルズーガに変更しました。
メルズーガが終点で、私と一緒に老婆と子連れの母親が降りました。
Supratoursのチケット売り場が開くのは午前7時なので、あと1時間は中に入ることができません。
チケット売り場の前にはベンチがあり、みんなそこに座りました。
私は老婆にタクシーはいつ来るのか尋ねましたが、ここにタクシーは来ないことを告げられました。
タクシーに乗るつもりでいた私は焦りました。
まだキャメルトレッキングの予約さえしていなかったからです。
私はモロッコに来る前、インターネットの検索で「リヤドマムーシュ」の存在を知りました。
「リヤドマムーシュ」はキャメルトレッキングで有名なリヤドで、日本語を喋ることができるオーナーやスタッフがいます。
私は「リヤドマムーシュ」までタクシーで向かうつもりでいたのですが、これではたどり着くことができません。
どうしようか悩んでいる間に、ベンチに座っていた子連れの母親が、迎えに来た車に乗って去っていきました。
残っているのは私と老婆だけです。
私は老婆に携帯を持っているか尋ねました。
彼女は持っている携帯を私に見せてくれたのですが、「リヤドマムーシュ」の電話番号までは知りませんでした。
寒い中待ち続けた甲斐もあり、午前7時にチケット売り場が開きました。
チケット売り場の受付スタッフに、「リヤドマムーシュ」に電話をかけてくれないか頼みました。
スタッフは「リヤドマムーシュ」のことを知っていて、私の頼みに快く応じてくれました。
電話で「リヤドマムーシュ」のスタッフに助けを求めたところ、Supratoursのチケット売り場まで車で迎えに来てくれることになりました。
迎えに来た車に乗せられて、私はめでたく「リヤドマムーシュ」にたどり着くことができたのでした。
「リヤドマムーシュ」の中に入ると、事情を知っている別のスタッフが食堂まで案内してくれました。
食堂はカーテンが閉め切られた状態で、暖炉の前にあるソファーの上では客が数人眠っていました。
私も奥のソファーを勧めてもらい、そこで布団を被って仮眠をとりました。
しばらく時間が経って、スタッフが食堂のカーテンを開けにきました。
私は彼からタオルを借りて、シャワーを浴びました。
シャワーを浴びた後は、50Dhmの朝食を断って、「リヤドマムーシュ」の外へ出掛けました。
「リヤドマムーシュ」から少し離れた場所には、土産物屋や売店がありました。
そこで私は水と1個2Dhmのお菓子をいくつか買って「リヤドマムーシュ」に戻りました。
「リヤドマムーシュ」に戻ってお菓子を食べていると、オーナーがやって来ました。
オーナーは、コロナが流行る前は日本人観光客の姿が多かったこと、少し前に1人で来た日本人女性が全てのツアーに参加したこと、砂漠では珍しい雨が降ったばかりであることを教えてくれました。
私はオーナーにキャメルトレッキングに参加したいことを伝えて、「リヤドマムーシュ」のHPから印刷したクーポンを渡しました。
早速今日の夕方キャメルトレッキングに参加することが決まりました。
キャメルトレッキングまではまだ時間があるので、私はもう一度「リヤドマムーシュ」の外へ出掛けました。
実はその時モロッコディルハムの手持ちがほとんどなかったのですが、キャメルトレッキングはクレジットカード払いに対応していませんでした。
「リヤドマムーシュ」の近くにあったATMや換金所に寄りましたが、残念ながらお金は降ろせませんでした。
「リヤドマムーシュ」に戻ると、キャメルトレッキングの準備が終わっていました。
その日キャメルトレッキングの参加者は私1人だけでした。
案内してくれるガイドにiPhoneの紛失を伝えたところ、ツアーの最中に撮った写真は後から私のメールアドレスまで送ってもらえることになりました。
スタッフとガイドの案内でラクダと対面しました。
ラクダが立ち上がる際、その勢いで振り落とされる人がいることを教えてもらいました。
私は緊張しましたが、なんとか振り落とされずにラクダに乗ることができました。
スタッフと別れてガイドと共に砂漠を進んでいきます。
乗馬と違って、砂漠の上を歩くラクダは大きく揺れながら進んでいきます。
それはまるでアトラクションに乗っているような感覚でした。
1時間後、ガイドの案内でラクダから降りました。
ラクダは逃げないように片足を紐で結び、草が生い茂っている場所に置いていきます。
ガイドと手をつなぎ、2人で砂丘を登りました。
そこでガイドが写真を撮ってくれるというのでお願いしました。
彼は私に色んなポーズを勧めてくれるので、私は恥ずかしがらずに撮影を楽しむことができ、素敵な写真も手に入りました。
写真撮影が終わった後は砂丘で砂遊びをしました。
それから、夕日を眺めながら彼の話を聞きました。
サハラ砂漠に住むモロッコ人をベルベル人というのですが、彼らはフェズに住む人々を嫌っていました。
フェズの人々は商売人なので、簡単に人を騙します。
砂漠に住むベルベル人はフェズの人々に騙された過去があるようでした。
また、砂漠に来る日本人観光客は「恥ずかしい」が口癖であることも教えてもらいました。
彼からベルベル人は恥ずかしがったりしないことを教えてもらいました。
夕日が沈む頃、ラクダに乗ってキャンプ場を目指します。
キャンプ場には沢山のテントが張ってあり、簡易トイレも設置されていました。
懐中電灯を借りて、今日の寝床を教えてもらいます。
案内されたテントの中にはベッドがあり、ガイドから借りたジュラバと手持ちのウルトラライトダウンを着ていれば寒さを感じることはありませんでした。
テントから出ると食事用のテーブルに案内されて、夕食ができるまでの間は焚火を眺めながらナッツとミントティーを頂きました。
夕食は野菜がたっぷり入ったタジン鍋とパン、デザートにミカンとザクロの練乳掛けが出ました。
食事が終わると、ベルベル人が3人現れて楽器を演奏してくれます。
私も一緒に民族楽器「トバイラ」の演奏に加わって、彼らと歌やダンスを楽しみました。
ベルベル人からとなりのトトロの「さんぽ」を歌うように促されましたが、私は恥ずかしくて上手く歌えませんでした。
ダンスは水泳のクロールのような、不思議な動きのダンスを踊りました。
焚火が燃え尽きる頃、楽器の演奏も終わり、みんなテントに戻ります。
私は懐中電灯以外にも、目覚まし時計代わりに小さな携帯を受け取っていました。
私はジュラバを着たままベッドに入り、そのまま眠りにつきました。